あんなの、女癖の悪い亭主がちょっといつもの癖を出しただけじゃないの。

法廷で偽証をしたら犯罪である。刑事処罰を受けなければならない。とりわけ、多民族国家であるアメリカでは法律が社会のルールを作るという考え方が強く、法廷での偽証は大きな犯罪だと見なされている。

1998年、アメリカで現役の大統領ビル・クリントンの偽証が発覚した。野党共和党は執拗に追及し、クリントンは窮地に立たされた。

実習生モニカ・ルインスキーとビル・クリントン大統領 TIME

野党を盗聴したあのウォーターゲート事件のリチャード・ニクソンですら弾劾裁判にかけられなかったのだが(正確には、かけられる前に自分から辞めてしまった)、クリントンは大統領弾劾の裁判にかけられた。

結果は、下院はクリントンを訴追したが、上院の弾劾裁判では議員の3分の2の賛成までは得られず、無事、無罪放免になった。

ただし、そもそものアメリカ世論は冒頭の一文の状況だった。「あの程度、別にいいじゃない」といったところ。クリントン嫌いの右派の強硬な人たちは別にして。

この弾劾事案で一躍有名になったのは、アメリカでは大学生あたりが夏休みに企業で研修させてもらうのが普通だが、その研修をホワイトハウスで受けたモニカ・ルインスキーだった。

モニカ・ルインスキー My Story in TIME

事件の宴の後、ルインスキーはフランスの出版社から、『モニカの真実』という、大統領の不倫スキャンダルを生々しく暴く書籍を出版している。
アメリカの出版社からは出版できなかったようだ。

それにしても、クリントンは大胆だ。

オーラルセックスをしてもらったり、愛用の葉巻をモニカのあそこに突っ込んだのは、アメリカ合衆国大統領執務室でのことだ。
部屋のなかは2人っきりだとしても、ドアのすぐ外には(もう1つドアがあるかもしれない)、秘書や警護官が詰めていたのではないのか。受付だっていたことだろう。

そもそも、こんなことをやって、それがばれたら、世界に君臨する(当時はそうだった)アメリカ政府の権威が失墜してしまう。

対して、ルインスキーは女性の狡猾なやり方を伝授されてもいた。クリントンの精液が付着した自身のドレスを、クリーニングに出すことなく、そのまま保管していたのだ。そうしたら、後で捜査官に証拠を提出できてしまった。

モニカ・ルインスキー

こういうことをやられるのだから、地位のある男は気をつけないといけない。女は強いから。

もちろんクリントンの不倫相手はルインスキー1人ではない。明らかになった相手だけであまりに多人数になってしまったので、アメリカ国民は「もういいわ」という思いになってしまった。
不倫が1件見つかっただけで辞職してしまう政治家たちは、少しぐらいクリントンを見習った方がいいかもしれない。

ビル・クリントンの妻ヒラリーは、このような華々しいセックススキャンダルのなかでも、妻およびホワイトハウスのスタッフとして、クリントンを支え続けた、と高く評価されている。

ただし、事件の渦中のある日の朝、ビル・クリントンは顔じゅうひっかき傷でオフィスに出勤してきた。

ヒラリーはその程度で赦してくれた、ということになっている。

モニカ・ルインスキーとビル・クリントン サイン入り