ブッシュ王朝3人目の大統領の誕生なるか?
今、ジェブ・ブッシュが世界の注目を浴びている。
第41代ジョージ・H・W・ブッシュ、第43代ジョージ・W・ブッシュに続いて、一家から3人目のアメリカ合衆国大統領が誕生するか?
父ジョージ・H・W・ブッシュはエリート中のエリートだった。
兄ジョージ・W・ブッシュは落ちこぼれの劣等生だったけれど、庶民のなかに入っていって気さくに交われる、深い度量をもった大統領だった。
それに対して、ジェブ・ブッシュ、正確には、ジョン・エリス・ブッシュ(頭文字J、E、BをとったらJEBだ)には、これといった特徴がない。
兄ジョージ・ウォーカーとは違って、子供時代に学業はそつなくこなしたらしい。
兄はキリスト教のなかでも福音派に改宗した、熱烈なボーンアゲイン・クリスチャン。アメリカの政治・宗教地図のなかで、中絶規制などを熱心に唱える右派クリスチャンたちに熱烈に支持されていた。
しかし、ジェブは共和党のなかでも穏健派。大人の視点でいえば良識派ということだが、裏側から見れば、何の特徴もない人物、となる。
2008年の大統領選挙で、共和党はマイノリティーの支持を黒人の民主党大統領候補バラク・オバマに奪われて、完敗した。マイノリティー票を集められるという点が、ジェブを共和党の有力大統領候補に押し上げてきた。ジェブの特徴はそれしかないのではないか?
ただし、1994年の時点では、兄ジョージ・ウォーカーよりもジェブの方が未来の大統領候補と見られていた。やはり兄は人生の劣等生すぎたか。
ところが、同年11月の選挙で、兄はテキサス州知事に当選したが、ジェブの方はフロリダ州知事に落選した。これで一気に兄の方が未来の大統領候補の座を射止めてしまった。(もちろんここには政治エリート家系であるブッシュ家の恩恵が働いている。)
ジェブも1998年にはフロリダ州知事に当選し、2000年のアル・ゴア対ジョージ・W・ブッシュの大統領選対決では、キューバのフィデル・カストロに「アメリカに選挙監視団を派遣してやろうか?」とからかわれる事態の、かなり中枢にいた。当時のキューバは共産主義一党独裁で、対するアメリカは世界中に民主主義を押しつけようとしていた、一部では煙たがられる存在だったわけだけれども。
ジェブはフロリダ州知事を2期8年そつなくこなし、共和党大統領候補への地歩を固めた。
穏健で、ちょっと小太りのジェブに何か特徴があるとしたら、奥さんがメキシコ生まれのメキシコ人だったことか。ジェブと結婚するまで英語は話せなかったという。
当然ジェブはスペイン語が堪能。移民規制に対するスタンスも共和党のなかでは特異だ。
もう1点は、ジェブもキリスト教内で改宗していることだ。兄ジョージ・ウォーカーもジェブももともとはアメリカ・エスタブリッシュメントの主流であるアメリカ聖公会のキリスト教徒だったが、兄が福音派に改宗したのに対し、ジェブは奥さんの影響でカトリックに改宗した。
もしジェブが大統領選挙に勝利したら、ジョン・F・ケネディに次いで史上2人目のカトリック教徒のアメリカ合衆国大統領になる。
晩年のサミュエル・ハンチントンはアメリカがWASPの国でなくなっていくことに強い危機感を抱いていたが(ハンチントンは単なる象牙の塔の学者ではなく、戦略家だ。ハンチントンが心配していたのはアメリカのエートスの問題だろう)、ジョン・ケリーもカトリック、ミット・ロムニーはモルモン教、バラク・オバマは黒人。もはやアメリカはWASPの国とはいえなくなってきている。これも時代の潮流といえる。
最近のコメント