クッキー・アンド・ティー。

ヒラリー・クリントンほど、アメリカの女性の半分に嫌われている女性はいない。

1992年のアメリカ大統領選挙で、46歳の新星ビル・クリントンはみごと大統領の座を射止めた。

それに伴い、妻であるヒラリー・ローダム・クリントンはファーストレディーとなった。
ヒラリーは全米トップ100にリストアップされる辣腕弁護士だった。キャリアウーマンのファーストレディーの誕生だ。

ヒラリー・クリントン 1992年

右翼と左翼、あなたはどっちが好きか?

「右翼」と「左翼」だとちょっと極端だから、「保守」と「リベラル」と言い直そうか。

保守の共和党の大統領の奥さんは、ナンシー・レーガン(若いころは女優だった)、バーバラ・ブッシュ、ローラ・ブッシュと、これみな専業主婦だ。

対して、リベラルの民主党の大統領の奥さんは、ヒラリー・クリントンもミシェル・オバマも、キャリアウーマンだ。

大統領夫人にはなれなかったが、2004年大統領選の民主党大統領候補の奥さんテレイザ・ハインツ・ケリーは、ローラ・ブッシュに向かって、「あなた、まともな仕事なんかしたことあるの?!」と口汚く罵れるぐらい、スーパーキャリアをもっている女性だ。

クリントン一家

ここは人好き好きなのだけれど、「ケリーの奥さんなんか大っ嫌いだ!」と思っている人は、アメリカ人にもけっこう多い。ケリーがブッシュに勝てなかったのは、奥さんの評価点も多少は入っていたのではないか? ブッシュの方はアメリカ国民に向かって、「ローラをもう1期、ファーストレディーにしてやってくれ」と語りかけることができた。

しかし、テレイザ・ケリーにも勝りアメリカ女性の半分(専業主婦の側に立つ人たち)にとことん嫌われたのが、ヒラリーだ。

「家庭にいて、クッキーを焼いて紅茶を飲むこともできたと思う。しかし、私は自分の職業を全うすることを決めた」

家庭でクッキーを焼いて、紅茶を淹れてくれる専業主婦の奥さんをもっている男は、たぶん幸せだろう。子供もそういう母親は好きかもしれない。

ヒラリー・クリントン 1992年

ヒラリーはこの一言で、アメリカ女性の半分から総スカンを食った。

さすがに今のヒラリーは、20年前のヒラリーとは違って、もっと大人になった。あんなぶしつけな発言は、2008年大統領選に出馬する際の、「私は勝つためにここにいる」ぐらいしかなくなったように思う。しかし、今でも心の奥底でヒラリーのことを嫌っているアメリカ女性は、けっこう多いと思う。

これって「ガラスの天井」ではなくて、自業自得なのではないか。

ただし、ヒラリーには人に、人しれないところでかなりの美徳があるはずだ。

ビル・クリントンはヒラリーのことを愛していた。ヒラリーの大学生時代のがり勉女の写真を見たとき、ほとんどの男性は「こんな女いやだ」と思うはずだ。しかし、ビルはそのがり勉女に惚れて、自分の方から言い寄っていった(と2人のうちのどちらかの自伝には書いてあった)。ヒラリーにはその外見とは別の素晴らしい魅力があったのだろう。